IMG_0477こんにちは、今井です。草や木の緑が濃くなってだんだん夏に近づいてきた気がします。最近雨が多くて作品が乾かず制作のスピードが遅くなっています。洗濯物を干すタイミングも難しいですね。今回は4月21日から26日まで穴窯を焚いていましたのでそのお話をさせていただきます。IMG_0856

私の家は父と祖父も陶芸家です。祖父は昔ながらの穴窯での作品焼成にこだわっていて30年以上前から春と秋の年二回家族で穴窯焚きをしています。私も小学生の時から薪割りなどの手伝いをしていて大学に入ってからは自分の作品も窯に入れて焼いています。

作品ができて施釉が終わったらまずは窯詰めです。穴窯は山の傾斜を利用して作られていて斜面の一番下の部分が焚き口になっています。窯の入り口はその焚き口のところになっていますので一番奥から作品を詰めていき最後に焚き口のところに作品を詰めます。焚き口に近いほど炎が近くて温度が高くなりますので窯の奥の部分には耐火度の低い作品から詰めて焚き口に近くなるにつれて高火度焼成の作品を詰めます。およそ4日間かけてこの作業を行い作品が詰め終わったら窯の入り口にレンガを積んで穴を小さくして焚き口部分だけ開けておきます。それから窯内の水分を減らすために1~2日間灯油のバーナーであぶります。IMG_0868

火入れの日は窯の前に鯛やお酒などお供え物をして窯焚きの安全と良い作品が焼けるようにお祈りします。ここから昼も夜も交代で窯の世話をして100時間かけてゆっくり900度まで温度を上げていきます。IMG_0947900度まで温度が上がったらくべる薪の量を増やしてここから還元をかけていきます。窯の中が酸化か還元かで作品の焼け方が大きく変わります。そして還元状態を保ちつつ温度を上げていき焚き口に近いところが1300度を超えて作品が十分焼けると今度は窯の側面からも細く割った薪をくべて窯の中央の温度を上げます。最後に奥の部分の温度を上げて窯変を出すために塩と炭を入れ約6時間薪をくべながら徐冷し完全に焼成が終わると焚き口もレンガで塞いで土をかけすべての穴を閉めます。2014-03-27 00.14.11

こうして2週間ゆっくりと温度を下げて人が窯の中に入っても大丈夫な40度以下になってから窯出しをします。13062389_876942232414330_9169952916440626258_n

今回は窯詰めの時に火の通り道を広くしたため温度の上りがよくしっかりと焼けていて良い作品が多かったです。志野もよく透光性のある信楽透土もきれいに光を通しています。

今回とれた作品は5月21日から開催した銀座黒田陶苑での二回目の個展にも出品しました。また秋の展覧会にも出品予定です。

2016-05-13 23.04.48今井 完眞

*今井完眞の作品は http://www.mizenka.com/jp/artist/Sadamasa-Imai でご高覧いただけます。

*Sadamasa Imai’s artworks can be seen at http://www.mizenka.com/artist/Sadamasa-Imai

一番下の2つの画像以外の画像:今井完眞撮影 穴窯を焚いている風景

一番下の2つの画像: 今井完眞作 穴窯で焚いた作品2016-05-12 11.23.10

椿と蛇

こんにちは今井です。工房の桜も散ってしまい葉が出てきて少し緑色になってきました。裏山を歩いてみるとところどころトカゲがカサカサ音を立てながら逃げていきます。もう旬が終わりかけの椿にヘビが巻き付いてきれいだったので思わず写真に撮ってしまいました。

No7 W9 D16 H9.5 (2)No21 W9 D9 H13.5 (2)そろそろ5月の個展に近づいてきて来ました。だんだんと作品が完成してきてできた作品を眺めながら出来栄えを確認します。基本的に窯出しのときは思い通りに焼けていなくて落ち込みますし、最初はよくできたと思っていても時間が経つとそれほどよく見えなくなったりするので窯で焼いて思っていたよりよい作品になる場合はほんの少ししかありません。私に限らず作品制作をする人は作品をつくる“テクニック”と作品を作るための“眼”(審美眼)は同時には成長することはなくてテクニックと眼が交互に成長していると思います。No10 W8.5 D8.5 H6.5 (2)そしてほとんどの場合、眼の方が先行しているので完成した作品に満足できることがとても少ないNo15 W12 D12 H10と思います。そんな中でよくできたと思うものをDM用作品としてギャラリーに届け、ギャラリーのオーナーさんが更にその中から数点に絞って写真を撮ってDMになります。すでに今回の個展の作品はギャラリーに届けているのでどんなDMになるかはとても楽しみにしています。No13 W8.5 D8.5  H13

さて、今月の21日から広島の工房にある穴窯を焚いています。最近植物ばかり制作していましたが、久しぶりにカニを作っています。カニ制作途中ディテールの細かい植物を作っていたせいかカニの制作が以前より手際が良くなっていて自分でも驚きました。少しでも制作中に時間や体力のゆとりを持つことは作品のクオリティーを上げるためにとても大切だと思うのでこれから少しずつそういったゆとりを持てるようにならなくてはいけないと思います。

今回の穴窯焚きはできるだけ写真を多く撮って次回のブログでご紹介させていただこうと思います。

今井 完眞

*今井完眞の作品は http://www.mizenka.com/jp/artist/Sadamasa-Imai でご高覧いただけます。

*Sadamasa Imai’s artworks can be seen at http://www.mizenka.com/artist/Sadamasa-Imai

一番上の画像: 今井完眞撮影 椿と蛇
上から2番目の左画像: 今井完眞作「蕪」
上から2番目の右画像: 今井完眞作「茄子」
下から2番目の左画像: 今井完眞作「椿(花のみ)」
下から2番目の右画像: 今井完眞作「柿」
一番下の左画像: 今井完眞作「パプリカ」
一番下の右画像: 今井完眞作 制作途中の蟹作品

青磁作品 花器こんにちは今井です。最近は前回のブログでもお話させていただいた陶と金属を組み合わせた花の作品を活けるための花器などを制作しています。花器には青磁釉を使っているので今回は青磁の作品についてお話いたします。

青磁作品 大香炉青磁は透明の釉薬の中に微量の鉄を加え還元焼成という焼成方法で焼く技法で青緑に発色します。この青磁は東洋陶磁独特のもので、もともとは窯の中で作品と薪の灰が化学反応しできる自然釉から始まったと言われています。中国の漢末三国時代には人為的に青磁の釉薬を作り焼かれていました。轆轤整形青磁は磁器の素地でできているものを“青磁”、陶土の素地でできているものを“青瓷”と区別します。私は陶土を使っているので厳密にいうと“青瓷”になります。私が陶芸に興味を持ったひとつの切掛けが青磁だったので造形の作品と並行して青磁も研究しています。轆轤整形 (2)

青磁作品の作り方

  • 轆轤や手びねりで形を作ります。
  • 乾燥させて一度800度で焼きます。これを素焼きと言います。
  • “ふのり”という海藻を鍋で1時間ほど煮てメッシュを通します。
  • 水で溶いておいた釉薬の水を捨て、代わりに“ふのり”を加えよくかき混ぜます。
  • 刷毛で作品に釉薬をかけて乾燥させ、また釉薬を塗り重ねます。これを何度も繰り返し釉薬の厚さを2~3ミリにします。
  • 約1250度で本焼きをします。このとき還元焼成といって、窯の中を酸素不足の状態にして焼きます。
  • 窯から出し完成です。貫入というヒビはこのあと徐々に増えていって美しい模様をつくりだします。

素焼きした後作り方を簡単にご紹介いたしました。このような工程で青磁は作りますが釉薬がはがれてしまうリスクがあり実際には殆ど失敗してしまいます。釉掛け釉薬の調合や陶土の吟味は専門に研究されている方でも思い通りにはいかないものだと思います。青瓷はそれだけ難しく完品はとても貴重です。私は青瓷の専門家ではありませんが少しずつでも良釉掛け 乾燥中い青瓷を作れるように研究をつづけていきます。

今井 完眞

*今井完眞の作品は http://www.mizenka.com/jp/artist/Sadamasa-Imai でご高覧いただけます。

*Sadamasa Imai’s artworks can be seen at http://www.mizenka.com/artist/Sadamasa-Imai

左上画像: 今井完眞作 花器作品

右上画像: 今井完眞作 大香炉作品

上から2番目の中央と右画像: 今井完眞による轆轤整形

下から2番目の左画像: 今井完眞作 素焼きした後の作品

下から2番目の右画像: 今井完眞作  作品への釉掛け

左下画像: 今井完眞作 作品の釉掛け乾燥中

Sadamasa Imai flower 1

上記画像:今井完眞作  透光性のある土で作った花の作品

こんにちは陶芸の今井です。今回は最近の制作についてお話しさせて頂きます。

前回のブログでもお話しさせていたとおり今は花をモチーフに制作をしています。これだけ続けて花などの植物を制作したことはいままでありません。

私が蟹などの生き物を制作するときは必ず誇張して作る部分と、逆に省略する部分があります。たとえば蟹の場合は蟹の口の内側は通常中の構造まで見えることはありません。蟹が食事中の時か死んでしまったときは一番外側の手のような部分が開いて中側が見えています。このときに見ることができる口の内側をあえて作品にするときは見えるように外側の手のようなところの形を変えます。逆に足先はいろいろな細部の表情がありますが作品では簡略化してシンプルな形にします。このように実物の蟹の要素を自分の解釈でコントロールして人が作品を見たときに着目する場所をコントロールして私が思う“蟹らしさ”を見る人に伝わりやすくしています。これはもちろん蟹に限ったことではなくすべてのもので共通していることだと思います。この誇張と簡略化は常にバランスを変えて制作していて同じモチーフを何度も作ることによって良いバランスがつかめてくるものなので、最近花のバランスの取り方が少しずつわかってきています。

Sadamasa Imai flower 2

上記画像:今井完眞作  透光性のある土で作った花の作品

今回の花の特徴的なところは透光性のある土を用いているところで最近になって信楽で開発された新しい土です。これまでも透光性のある磁器土はありましたがそれにくらべてもすばらしい透光性です。主原料に光ファイバーが使われているそうです。個人の作家が研究してもなかなか作り出すことが難しい土だと思います。3㎜ぐらいの厚みなら十分光が透けますし、蕪や大根といった白いけれど少し透明感のあるモチーフには最適であると思います。ただものすごく成形が難しくモチモチしていて手にべたつきます。花など薄く繊細なものを作る場合は少し乾かしてから彫刻刀で彫りながら成形します。扱いにくい土でも工夫しながらつきあっていけたらなと思っています。

今井 完眞

*今井完眞の作品は http://www.mizenka.com/jp/artist/Sadamasa-Imai でご高覧いただけます。

*Sadamasa Imai’s artworks can be seen at http://www.mizenka.com/artist/Sadamasa-Imai